頚髄症/神経根症/椎間板ヘルニア/後縦靭帯骨化症など
運動障害や強い痛みを認める場合、経過をみながら手術を検討します。
時に手根管/肘部管症候群などの末梢神経障害やALSなどの神経変性疾患が隠れていることがあり診断は慎重に行います。
椎間板ヘルニア/後縦靭帯骨化症/黄色靱帯骨化症など
下位胸椎の病変は症状が多彩なため診断が見逃されやすく、
しっかりした診断が必要となります。
治療は頸椎や腰椎と同様に除圧術や固定術を行います。
時に手根管/肘部管症候群などの末梢神経障害やALSなどの神経変性疾患が隠れていることがあり診断は慎重に行います。
変形性腰椎症/腰部脊柱管狭窄症/椎間板ヘルニア/すべり症など
治療の基本は保存的加療、除圧術で、不安定性のある場合は固定術を検討します。
除圧術の目安は運動機能障害、強い痛みや感覚障害です。
麻薬を含めた内服薬やブロック注射などでも治りにくい疼痛のことを難治性疼痛(なんちせいとうつう)と呼びます。
外傷、手術、脳卒中などの後に出現する厄介な痛みです。
難治性疼痛は機能神経外科が得意とする領域です。
脊髄刺激療法、DREZotomy(ドレゾトミー)のほか、Myelotomy(ミエロトミー)、
運動野刺激療法などの手術治療があります。
痙縮(けいしゅく)は麻痺側の手足の関節や筋肉が硬くなる状態で、少し専門的に述べると「筋緊張が亢進した状態」です。脳卒中や脳性麻痺などの脳の病気や、脊髄損傷などの脊髄の病気で起こります。
痙縮を認める患者様は多い反面、治療を受けている患者様は少ないようです。
当院ではボトックス治療、バクロフェンポンプ療法(ITB療法)、DREZotomy
などの治療が可能です。
水頭症(すいとうしょう)は頭の中に水(髄液)が溜まりすぎる病気です。
水頭症は小児の先天性水頭症のほか、脳卒中後など脳の病気で認める「2次性水頭症」、高齢者に誘因なく生じる「正常圧水頭症」があります。治療はいずれもシャント術と呼ばれる手術のみです。
正常圧水頭症は高齢者の方に多く認められます(65歳以上の100人に1-2人程度)。
3つの症状が同時に出現する訳ではなく、例えば歩行障害のみのこともあります。歩き方に特徴があり、少し足を外側に向けてチョコチョコと歩くようになったら、水頭症を疑ってください。
正常圧水頭症は「手術で治る認知症」とも呼ばれ、シャント手術で症状の改善が
期待できます。
不随意運動(ふずいいうんどう)は脳の中で運動を制御する部位(主に脳深部の神経核)の不調により体が勝手に動いてしまう状態で、錐体外路症状とも呼ばれます。
症状が多彩なため、しばしば診断に難渋します。時に精神科疾患と診断されるなどの誤診例もあります。
パーキンソン病(パーキンソン症候群)、ジストニア、本態性振戦、チック、バリズムなど様々なものがあります。
一般的に脳神経内科にて診断、内服加療、リハビリ加療が行われますが、
内科的な管理が難しくなった段階で
脳深部刺激療法 (DBS)、集積超音波治療 (FUS)などの
機能神経外科手術やデュオドーパなどの治療を検討します。
顔がピクピク動く顔面痙攣も不随意運動に含まれます。
初期の段階ではBotox注射を行いますが、症状が強く、顔面神経を圧迫している血管が同定できれば微小血管除圧術を行います。
てんかんは100人に1人程度に認められる身近な病気です。
多くの患者様は抗てんかん薬の内服で発作のコントロールが可能ですが、2-3剤の多剤内服でも発作が抑えられない場合、難治性てんかんと呼ばれます。難治性てんかんのうち側頭葉てんかん、新皮質てんかん、視床下部過誤腫など手術で改善できるものもあり、大学病院やてんかんセンターへの受診が望まれます。
当院で脳波検査が可能ですので的確な診断と治療を目指します。
またマスターはてんかん外科にも取り組んできましたので (Fujioka et al. 2016)、
手術適応が示唆される場合は適宜てんかん専門病院へ紹介いたします。
てんかんは全年齢で認めますが、高齢者で頻度が高くなります。近年、痙攣発作を伴わない非痙攣性てんかん重責発作 (NCSE) が高齢者に比較的多く認められることがわかってきました (Fujioka 2020)。反応性が悪い高齢の患者様で脳波検査を行ったところ、NCSEの所見(右画像)を認め治療にて症状が改善しました。
参考文献
- Hiroshi Fujioka, Eiichirou Urasaki, Akifumi Izumihara, Katsuhiro Yamashita. Nonconvulsive Status Epilepticus Following Implantation of Subdural Grid Electrodes in a Brain Tumor Patient. Clinical Neurophysiology 127(1):975-976, 2016.
- Hiroshi FUJIOKA. Nonconvulsive Status Epilepticus in Neurosurgery. Chapter 6, In Horizons in Neuroscience Research. Volume 39, Nova Science Publishers, 2020.
脳卒中
脳血管障害は脳の血管が原因で生じる病気をまとめた呼び方で、
くも膜下出血、脳内出血、脳動静脈奇形、もやもや病、硬膜動静脈奇形、海綿状血管腫などがあります。
脳血管障害のうち突然発症するものを脳卒中と呼び、
主にくも膜下出血、脳出血、脳梗塞が該当します。
脳卒中は点滴やリハビリによる保存的治療で済むものもありますが、
緊急治療が必要になることも多く、必要と判断された場合は
脳卒中センターを備えた急性期総合病院での治療をお勧めしています。
頭部外傷、脊髄損傷
近年、高齢者の頭部外傷が増加しており、転倒による急性硬膜下血種の対応も増えてきました。
経過観察となることも多いですが、適応があれば減圧開頭術を行います。
また年齢や全身状態から
ICPセンサーを頭蓋内に留置のうえ脳圧の管理のみを行うこともあります。
頭部打撲後に血がじわじわと溜まる慢性硬膜下血種も高齢者の代表的な病気です。
治療は局所麻酔で穿頭術やリザーバー留置術などを行います。
外科的治療の対象となる頭部外傷としては、
当院での緊急手術は困難ですので、適宜他院に紹介となります。
頭部打撲による脳震盪は一過性の意識障害や記憶障害(健忘症)で終わるように見えますが、頭痛、めまい、ふらつき、易疲労性などの不定愁訴のような症状が続くこともあります。
初期の段階でしっかり診断をつけ、症状についてフォローしていく必要がありますので、注意が必要です。
昔は交通外傷など若者の割合が多かったのですが、現在では高齢者の割合が半数以上を占め、転倒による頚髄損傷が増えています。リハビリで症状の改善が認められない場合は椎弓形成術などの手術を行うこともあります。なお議論はありますが、頚椎症に対し予防的な除圧術を行うという考えもあります。
脳腫瘍、脊髄腫瘍とも頻度は多くはなく、脳腫瘍はおよそ1万人に1人、脊髄腫瘍ではさらに少なく10万人に1人程度です。
腫瘍には良性から悪性まで様々な種類があります。
原発性脳腫瘍の中ではグリオーマ(27%)、髄膜腫(27%)、下垂体線種(18%)、神経鞘腫(10%)の順となりますが、例えばグリオーマの中でも悪性度の低いもの(WHO grade I)から高いもの(WHO grade IV)まで様々です。
診断は腫瘍にもよりますが、
PET、SPECT、腫瘍生検、遺伝子診断(例えばLOH 1p/19q, MGMT)などの
高度医療機器により行われます。
治療法も多彩で
化学療法、放射線療法、手術療法を組み合わせて行うことが多いです。
手術については、5-ALA、覚醒下手術などが必要な場合があり、
高度の専門医療が可能な大学病院や総合病院などでの治療をお勧めします。